学童野球 指導者向け:アドバイス直後の変化をどう捉えるべきか?
学童野球の現場で多くの指導者が経験するのが、アドバイスをした直後に選手の動きやプレーが良くなる「即時変化」です。この瞬間はとても嬉しく、指導者としての手応えを感じられます。しかし、この変化を過剰に評価しすぎることは、本当に子どもの成長を促していると言えるでしょうか?
学童野球における即時変化の例
以下は学童野球の現場でよく見られる即時変化の具体例です。
- バッティングフォームのアドバイス直後:「もっと肘を高く上げてみよう」と言うと、その場で腕の位置を意識しスイングが良くなる。
- 守備の構えのアドバイス直後:「膝をもう少し曲げて構えよう」と伝えると、低い姿勢がすぐに取れて守備準備が良くなる。
- ピッチングでの肘の位置指導直後:「肘をもっと高く上げて投げてみよう」と伝えると、すぐに肘の位置が改善されてコントロールが良くなる。
- 投球フォームのイメージアドバイス直後:「腕をもっと前に出すイメージで投げてみよう」と言うと、ボールの勢いが増しコントロールも向上することがある。
ただし、このような即時変化は意識が集中した一時的なものであることが多く、持続的に身についているかは別の問題です。
即時変化のメカニズムとは?
アドバイスを受けてすぐに動きが改善するのは、主に以下の理由が考えられます。
- 意識の集中度が上がる:指摘された部分に注意を払うことで、一時的に良い動きができる。
- 動作の「やってみよう」効果:新しい動きを試すことで一時的にフォームが変わる。
- 緊張や興奮状態によるパフォーマンス向上:緊張感が適度に高まり、集中力が増すこともある。
例えば、難しい計算式「12×12=144」をその場で覚えてすぐに答えられたとしても、それは一時的に記憶しただけで、
「明日になったら本当に覚えているかな?」という疑問が残ります。
これは学童野球の動きも同じで、アドバイス直後の良い動きが、しっかり身についているかどうかは別問題なのです。
指導者の中にはゴルフをしている方もいるかと思います。
ゴルフのレッスンで、一度教わったことが次のレッスンの時にはできなくなっている経験はありませんか?
言われた直後はうまく打てて、「ほら、言った通りだ!」とゴルフコーチに言われたことがある方も多いはずです。
これも同じく、一時的に良くなった動きをしっかり身につけて、継続できているかが重要なのです。
即時の変化は喜ばしいこと、でも…
すぐに変化が感じられる指導者に人気が集まるのは自然なことです。しかし、その変化が本当に子どもの成長や将来のためになっているのか、一旦立ち止まって考えてみてほしいのです。
もちろん、即時の変化は指導者も子どもも嬉しいものです。努力がすぐに結果に結びつくのはやりがいがあります。しかし、コツコツと時間をかけて子どもと意見交換を続け、理想的なフォームに近づけていく過程こそ、非常に価値のあるものではないでしょうか?
また、YouTubeなどで「これは使えそう!」と思った技術や練習法をすぐに試してみてうまくいったとしても、それが必ずしも良い経験とは限りません。短期間での成功体験に満足せず、長い目で見て本質的な成長を目指すことが大切です。
野球に限らず、人はすぐに結果を求めがちです。しかし、人間の体は長い年月をかけて作られてきたものであり、たった一言のアドバイスで大きく変わるのは、プロやそれに近いレベルの選手の場合が多いです。成長期の子どもには、段階的な積み重ねが必要なのです。
身体の専門的な視点からの注意点
指導者の皆さんにぜひ理解していただきたいのは、「こう動いてほしい!」と指示を出しても、子ども自身の身体がその動きを可能にする筋力や柔軟性をまだ十分に持っていないことがあるという点です。
筋力や柔軟性が不足した状態で無理に動きを変えようとすると、身体に負担がかかりケガのリスクが高まるだけでなく、逆に動きが悪くなってしまう場合もあります。
ですから、動きを直す指導を行う際には、子どもの身体の発達段階やコンディションを考慮し、無理のない段階的なアプローチを心がけることが非常に重要です。
即時変化を過信するリスク
「今だけ良ければいい」という考えは成長の妨げになることがあります。
- 習慣化されていない:一時的な動きの改善はすぐに元に戻ってしまうことも多い。
- 自己判断力が育ちにくい:指示待ちになり、自分で考えて動けなくなる可能性。
- 負担が見えにくい:無理な動きや力みが隠れてしまう場合がある。
本当に大切な成長とは?
子どもの成長は、瞬間の変化ではなく、繰り返しの積み重ねによって確かなものになります。
- 自分で動きを修正する力
- 繰り返し練習して身につける習慣
- 体の使い方の理解と感覚の定着
- 失敗を経験して考えながら成長する姿勢
指導者へのアドバイス
- アドバイス直後の変化に一喜一憂せず、長期的視点で見守る。
- 即時変化を次のステップへのきっかけにする工夫をする。
- 子ども自身が気づき、考えられる環境づくりを心がける。
- 継続的なフォローと褒めるポイントを明確に伝える。
子どもたちの未来のために、目先の変化だけでなく、本質的な成長を促す指導を続けていきましょう。

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